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「日本はなぜ第二次世界大戦の史実を直視し得ないのか」

以下は某記者による日本考察です。第二次世界大戦終結60周年の今日、一読の価値ある記事と思い、翻訳してみました。日中関係を考える上での参考にして頂けたらと思います。(福田)

第二次世界大戦中、日本軍は中国を侵略した。筆舌に尽くしがたい罪を犯し、中国にもたらした直接的、間接的財産及び経済損失は5,000億ドル以上に達し、3,500万人に上る同胞を死傷させた。ドイツのファシズムと比較しても、日本軍の罪業は引けを取ることがない。しかし1972年より、毎年夏になると10名以上の閣僚らがA級戦犯を祀る靖国神社を公式参拝している。影響力を持つ自民党議員たちは、その都度この参拝は侵略戦争を肯定するものではないとの見解を表明している。また一部のメディアもその見解に付和雷同している。1998年12月22日、東京高等裁判所において、戦争犯罪を懺悔した旧日本軍兵士の控訴は棄却された。(注※1)このような日本の対応と対象的なのが、ドイツである。ドイツはこれらの史実を自国の教科書に掲載し、さらに幾度と無い謝罪を繰り返している。元西ドイツ首相であるヴィリーブラントは、70年代にワルシャワを訪問し、ユダヤ人被害者の記念碑に献花して、長い時間そこに跪き懺悔をしていたと言う。新首相のシュレイダーは、ドイツ企業の戦争中の強制労働問題に対して明確に責任を表明している。日本とドイツ間に生まれたこの天と地ほどの差異の原因はどこにあるのだろうか。
ドイツと比較すれば、日本のファシズム軍国主義勢力が戦後に受けた粛清や打撃は、ドイツのファシズムが蒙ったものとは比較にならないほど軽微なものである。
 資料によれば、極東国際軍事裁判及び連合国中国戦区軍事裁判が処罰した戦争犯罪者(判決後無罪となった者を除く)は総計約400名である。その後アメリカ軍によって2度、A級戦犯者の釈放が行われている。細菌兵器製造の戦争犯罪が免責されているだけでなく、日本軍の支那派遣軍総司令官だった岡村寧次さえも南京政府より無罪放免されている。これらの状況と比較すれば、ドイツではニュールンベルク国際法廷においてナチスのA級戦犯は死刑判決を受けて執行され、さらにB級のさまざまな戦犯らも秘密裏に処刑されている。近年、イギリスやその他各国の機密文書の開示によって、戦後、イギリス及びイスラエルなどの国々がB級ナチス戦犯を秘密裏に追及するため特殊部隊をドイツに投入していたことが判明した。第二次世界大戦終結後、イギリスのチャーチル首相は、ナチス戦犯に相応しい処罰が与えられないことを案じ、イギリス軍に秘密裏に特殊部隊を組織するよう命じている。特殊部隊は深夜人々が寝静まった頃、悪名高いナチスの残党を連合国軍当局が召喚したとして自宅から郊外へ連れ出し、裁判を行わないまま森の奥深く銃殺刑に処した。
 ドイツと比較すると、日本ファシズムの基礎を形作った封建専制軍国主義文化の要素は、戦後においても未だ徹底的に払拭されてはいない。
 第二次世界大戦後、旧ソ連軍は東ドイツの社会制度を徹底的に改革し、連合国軍は西ドイツにおいて非ナチス化を推進した。日本においては、軍国主義に関するいくつかの文化的要素、例えば神格化された天皇に深くかかわる先祖崇拝、家長制、集団主義などに対して、未だに徹底的な改革は行われていない。戦犯の位牌を祀る靖国神社への年1回の参拝儀式も、右翼による国家主義や熱狂的愛国主義を称揚し、第二次世界大戦の歴史の改竄を奨励しているかのようである。戦争において非常に重大な責任のある日本国天皇は、戦後も依然として崇め奉られている。
 日本は中国の自尊心が打ち砕かれていないことを軽視しつつ、経済的発展とともに台頭してきた。
 第二次世界大戦前、日本の熱狂的愛国主義たちは中国のことを、「東亜病夫」(アジアの臆病者)と呼んだ。19世紀頃より日本は、自国が特殊な卓越した民族でその他の民族を統治することのできる能力や使命を帯びているといった神話を作り上げてきた。盧溝橋事件後、日本は中国を3ヶ月で滅亡に追い込むと名言し、表に現れ出た中国の自尊心をないがしろにしてきた。第二次世界大戦末期、アメリカ軍による2回の原爆投下後、旧ソ連軍は枯葉をなぎ倒すような勢いで関東軍を壊滅させ、日本を降伏へと追い込んだ。よって多くの日本ファシストにしてみれば、日本は中国に打ち負かされたわけではないのである。
 20世紀下半期、日本は再び経済超大国として頭角を現した。これも日本国内の熱狂的愛国主義にとってみれば、日本が中華民族より秀でていることの証明であるようだ。
 日本の国民的性格とは。西欧の学者ベネディクトは、東方文化及び日本文化を称して「恥の文化」、これに対して西欧文化を「罪の文化」と規定している。西欧人の見解では、罪の認識は救いを得るために不可欠で、罪を悔い改めて後、初めて救いを得ることができる。しかし面子を重んじることを重要な原則とする日本文化、その最たるものが日本の武士であった。彼らにとって失敗とは、死をもってしか雪ぐことのできない恥辱なのである。第二次世界大戦の史実を改竄しようとする行動は、まさしく現代の日本右翼勢力がそういった文化的性格を継承していることの現れである。
 しかしここで明記しておくべきは、著者は報復主義を奮起したいわけでもなく、日本の天皇制の廃止を唱えたいわけでもないことである。日本は民主主義であり、日中友好を主張しており、かつ歴史を反省している誠実な人々も数多くいるということを著者も知っている。そのような主義主張や人々が、第二次世界大戦の史実を改竄する流れを退けたとき、日本は真に偉大な民族となり得るのではないだろうか。

※訳者注釈1 「南京大虐殺」の事実を綴った著作の記述が名誉毀損に当たるとして起訴され、その訴訟に敗れた東史郎氏の裁判。
(著者/何平)

by saiko-ch | 2005-08-15 16:25 | 日中関係